めるかーど開店

雪が溶けて春になって開店しようと準備をして、気がつくと何もすることがなく、時がただ過ぎていた。
「お客さんに出す料理の練習しようかなぁ…でも材料買うのも、もったいないしなぁ」
その時パッとひらめいた!
お客さんからお金をもらって、料理の練習をすればいいのだ。
とっくのとうに、飲食店の許可もとってあることだし。思い立ったら早かった。

しかし、ここで大問題が持ち上がった。夫婦ふたりともサラリーマンだった命題が、ここに来て発生したのだ。
「定休日は、どうする?」
「週休二日にしない?」
「いや、ここは1日で、ひとまず」
「じゃぁ、月曜日にしようか」

1989年2月のカレンダーを見た。
2月最初の月曜日は6日。7日開店。
待てよ!13日まで休んだら、2月14日。チョコレートの日だ!
否、バレンタインだ!

開店日が決まった。それまでの間、開店準備のため、夜もせっせと働いたのだが、窓の外は吹雪。
夜の帳が降りた小樽市最上町の路上には、人影など全くなく、たまにバスを降りた一人二人が通り過ぎるだけ。
そしてその足あとは、すくに雪で消えてしまうのであった。

午後7時には、もう誰も通り過ぎる人のいない、この現実。
ここで、レストランを始めるのである。